大腿骨頭切除術の適応となる最も多い疾患はレッグ・ペルテス病でしょうか。10 kg以下の小型犬種で、成長期(8ヶ月齢がピーク)に片側性に発症することがほとんどですが、両側性に同時発症したという2つの報告(16.5%と12%)もあります。発病の原因はいまだ特定されておりませんが、大腿骨頭の虚血性壊死が病理学的な変化として見られています。正常な構造を取り戻すことはありません。
多くの場合、後肢に跛行が見られ、長引くと患肢を挙上したままとなり、また跛行が目立たないケースでも負重が不十分であるために触診にて左右の後肢の太さを比べると筋肉が明らかに細くなってきます。確定診断はレントゲン検査で行います。
レッグ・ペルテス病に対する大腿骨頭切除術は、運動制限や疼痛管理などの内科的な管理を選択するよりも結果が良好で、適切に手術を行えばほぼ100%普段の生活に困らない程度の歩行が可能となります。大腿骨頭切除術を行った結果として僅かに背側に後肢が短縮するため、信号待ちなどの静止時に肢を浮かすなどの跛行が残ることがあります。なかには術前に長期に後肢を挙上して筋肉がガリガリに痩せてしまった症例では、3本足で歩くことに慣れてしまい、手術後もなかなか肢を使ってくれず、歩行を開始するまでに根気よくリハビリを続ける必要があります。

犬の解剖カラーリングアトラスより