2012年9月20日木曜日

流涙症



 涙液は瞼にある涙腺で作られ、眼球表面に広がった後、目頭(内眼角)の上下眼瞼のそれぞれ1カ所ずつある涙点に入って鼻涙管を通過し鼻の穴(外鼻孔)に排泄されます。涙腺で涙液が過剰に産生されたり(反射性分泌)、涙点から鼻涙管までの間で閉塞があると流涙症が起こります。
 目をショボショボさせたり(羞明)、目やに(眼脂)を伴っていたりする場合は、眼疾患を原因とする(異物や睫毛の問題・角膜疾患・ブドウ膜炎など炎症疾患)痛みによる反射性分泌による流涙症である可能性が高くなります。
 緑色の染色液を両眼に続けて垂らし、その染色液が数十秒から数分以内に外鼻孔に抜けて垂れてこなければ、鼻涙管の排泄異常による流涙症と診断します。涙点や鼻涙管が先天的に欠損していたり、狭く狭窄して通過しにくくなっていることもありますし、腫瘍や異物、炎症産物などが詰まって流れにくくなっていることもあります。
 涙やけが茶色くなるのは、涙液にポリフェノールが含まれているため、日光にあたることにより涙で濡れた部分が茶色く染まってしまいます。
 眼疾患が存在する場合は、原因となる疾患の治療が必要ですし、鼻涙管閉塞が疑われる場合は、涙管洗浄を行い、抗生物質の点眼や内服を行うのが一般的な治療でしょうか。
 受付に置いてある、怪しいパッケージのサプリメントにお気付きの患者様もいらっしゃるでしょうか?上写真のチワワくんに使ってもらったところ、2ヶ月で怖いほど綺麗になりました。






1ヶ月後。






そして2ヶ月後!



 下の写真は、涙やけが目立つ白いプードルの別症例。左が投与前、右は投与後ちょうど1ヶ月経過した時点の写真。



2012年3月30日金曜日

食道梗塞


 カボチャを焼いた自家製のおやつを食道に詰まらせたポメラニアン君。レントゲンは造影剤(バリウムのこと)が食道内に停滞して(矢印)胃の中にまで流れていかない様子。
 早速全身麻酔を行い、内視鏡を用いて異物の摘出を試みます。そのカボチャが中途半端に柔らかく、更に食道にギッチリ詰まっていたので内視鏡で引っ張り出すことも胃の方へ押し込むことも出来ませんでした。内視鏡用の鉗子を用いて少しづつ地道に詰まったカボチャの中心をほじくって2つに分割して、無事、胃に落とすことが出来ました。

2012年1月5日木曜日

ジアルジア症


 ジアルジア症は、原虫であるジアルジアが消化管内に寄生することにより発症し、犬や猫をはじめ多くの哺乳類、鳥類、そしてヒトにも感染します。急性ないし慢性の下痢を示す疾患で、糞便と共に体外にシストまたはトロフォゾイト(写真左矢印)というものが排出され、何らかの過程で経口的に感染が成立します。感染しているにもかかわらず無症状の場合も多くあります。ペットショップやブリーダーの仔犬におけるジアルジアの感染率は高い(60%)と報告されています。更に犬からヒトへの感染も危惧され、公衆衛生上重要な寄生虫感染症(平成11年から施行された感染症法において5類感染症に位置づけられています)となっています。
 ジアルジアは一般的に行われている糞便検査での検出率は悪く、希にみられる程度でした。昨年秋に検査キット(写真右:陽性結果、左写真と別症例)が発売され、簡単に検査が可能となりました。発売以来、この高い感染率の報告があり、かつ人畜共通感染症の可能性が示唆されているため、来院した仔犬の糞便検査に対してルーチンにジアルジアの検査を行いはじめて、あらためてこの高い感染率に驚かされます。