2011年7月19日火曜日

ワクチン接種後アレルギー反応


 実際どれくらいの頻度でワクチン接種後のアレルギー反応は発生しているのだろう?残念ながら日本での正式な報告はありません。イギリスにおいて1995〜1999年に行われた疫学調査においては、10,000回のワクチン接種につきアナフィラキシーの発生が0.018回、過敏反応(具体的な症状は不明)が0.028回、蕁麻疹が0.007回と報告されています(Gaskell,R.M.,et al.(2002))。またアメリカの疫学調査(1,226,159頭)では、10,000頭につき、アレルギー反応(具体的な症状は不明)が12.1頭、アナフィラキシーが0.65頭、蕁麻疹が0.26頭となっています(Moore,G.E. et al.(2005))。

 ワクチン接種後のアレルギー反応は、呼吸器・循環器症状(虚脱、チアノーゼ、低血圧、低体温、呼吸困難、呼吸速迫など)、皮膚症状(顔面の腫脹、浮腫、痒み、紅斑、蕁麻疹など)および消化器症状(嘔吐、下痢など)に分類することが出来ます。また症状が発現するまでの時間として、1つは接種後数分から1時間以内に発現する即時型反応、もう1つが接種後数時間から数十時間で発現する非即時型反応の2つの発現様式が見られます。このなかで呼吸器・循環器症状は即時型反応によるものであり、いわゆるアナフィラキシーによるものと考えられます。 接種から1時間は死に至る可能性のあるアナフィラキシーショックが発現する可能性があるため、注意深く観察する必要があります。
 大森ら(JSAVA.No46,(2006))はワクチン接種後24時間以内にアレルギー反応と考えられる症状を呈した犬85頭の解析を行っていますが、なかでもアレルギーを起こしやすい犬種としてミニチュア・ダックス(31/85頭)を上げています。けれども接種した全ミニチュア・ダックスの総数(母集団)が不明のため、現在の日本のダックス人気から考えると一概に好発犬種かどうかは確定できないとしています。
 これまで不明な点が多かったワクチン中の原因アレルゲン成分が明らかになってきました。製造段階で使用される牛胎仔血清、安定剤としてワクチンに含まれているゼラチンおよびカゼインに対して反応しているようです。現在市販されている犬用ワクチンには牛胎仔血清中のタンパク質の成分の1つであるBSAというものが大量に含まれているそうです(Ohmori,K. et al.(2005))。ヒト用ワクチンではWHOよって基準値が設けられいて、含有する量を少なくしているそうですが、犬用ワクチンにはこの基準値を大きく上回るBSAが含有されているそうです。
 ヒトではゼラチンを含まない低アレルゲン化ワクチンなるものが製造されているそうです。なぜ犬用低アレルゲン化ワクチンが出来ないのでしょうか?

2011年7月7日木曜日

乳腺腫瘍


 乳腺腫瘍は、犬に発生する腫瘍の中で、皮膚腫瘍についで2番目に多く、雌では全腫瘍の中で52%と最も多いとされています。小動物臨床で最も手術を行う機会が多い腫瘍の1つです。発生年齢は10歳前後で、約50%が悪性、そのうち50%が転位しやすい(fifty-fifty rule)とされています。だいぶ古い報告ではありますが、初回発情前に避妊手術を終えていると乳腺腫瘍発生率は0.5%、2回目までで8%、それ以降は26%と報告されています。出来るだけ早期に避妊手術を行うことは、乳腺腫瘍の発生予防としての効果は高いと思われます。


上写真はビーグル、下写真はラブラドールの症例です。