2011年11月24日木曜日

胃内異物


 鳥の骨を飲み込んだとの主訴で来院されました。腹部レントゲン検査を行ったところ胃内に大きな骨(矢印)を確認し、内視鏡での摘出を行うこととなりました。異物の骨の端っこがツルツルしていて上手く鰐口鉗子で挟むことが出来ず、スネアワイヤーを使って骨の端の方を掴み、なんとかうまいこと食道内に誘導して摘出することが出来ました。骨が大きくて噴門(胃の入り口)のところで引っかかってしまうため少し苦労しました。

 摘出してみると鳥の骨ではなく、豚リブ?今回のような棒状異物には他にアイスの棒や竹串を摘出する機会が多いです。










写真は内視鏡処置直後のシーズーくん。 


2011年11月19日土曜日

骨折治療の評価


 AOでは術後のレントゲン写真を4つの˝A˝で評価するように指導している。
Apposition(近接):骨折部どうしがどの程度近くに寄っているか(くっついているか)?
Alignment(位置関係):ねじれた位置や曲がった位置で固定していないか?
Apparatus(器具):インプラントの使用法、サイズ、強度は適正か?
Activity(活性):生物学的環境は適正か、治癒の所見はあるか?
 この4つの˝A˝を厳しい目で批判的に評価することにより、骨折治療の質の向上につながるとしています。


 6.3kgの柴犬。成長板が閉鎖していないので若い症例です。蝶形骨片を伴う脛骨骨幹部の骨折。少し見にくいですが、側面像にて脛骨遠位にかけて長い亀裂が見られます。Apparatus、インプラントの選択、使用法は適切だったのかなぁ・・・。

2011年11月15日火曜日

脾臓の腫瘍


 脾臓に出来る腫瘍の約2/3が悪性の腫瘍、その2/3が血管肉腫(Double2/3の法則)と言われています。血管肉腫は非常に侵襲性が強く、約80%の症例で肝臓に転移が見られます。多くは無症状で進行し、腫瘍が徐々に大きくなってきてお腹が膨らんでくる(腹囲膨満)、または腫瘍が破裂して腹腔内で大出血し突然虚脱するなどで明らかとなります。超音波所見や肉眼所見での良悪の鑑別は困難なので、通常は脾臓摘出後の病理組織検査で診断を行います。それまでは暫定診断で治療することとなります。

 血管肉腫を伴う犬の50%が播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発しているという報告、また血管肉腫を伴う犬の25%が血液凝固異常で死亡という報告もあります。手術前の血液検査でDICのような止血異常が認められるときには輸血が必要となります。血管肉腫はゴールデンやラブラドールなどの大型犬が好発犬種となっているため輸血のための血液を確保するのが困難です。(右写真と上レントゲンは別症例)
 脾臓の血管肉腫における脾臓の摘出単独での治療では、1年生存率が10%未満と報告されています(通常2〜3ヶ月)。脾臓の腫瘍は「逆に言うと1/3は良性」の結節性過形成、血腫、血管腫などです。脾臓の腫瘍=悪性という先入観で治療を諦めないようにして下さい。