2013年2月15日金曜日

大腿骨遠位成長板骨折の整復



 大腿骨遠位の骨折は成長線の残る成長期の動物に多く、手術による成長線の損傷を最小限にしなければなりません。損傷が大きいとその後の骨の発育を阻害することになります。
 関節周囲の骨折の固定にはキルシュナーワイヤー(Kワイヤー)やスタインマンピンなどのピン(それぞれの名前の違いはピンの太さの違い)を多く使用します。大腿骨遠位のSalter-Harris(ソルターハリス)Ⅰ型とⅡ型(下図aとb)の骨折はKワイヤーを使ってクロスピン法またはラッシュピン法で固定します。顆上骨折を伴うと難易度がグッとあがります(-。-;)
                AO Principles of Fracture Management in the Dog and Catより
 症例はMシュナウザー(Salter-Harris2型)。骨折部を解剖学的に、またはやや過剰整復気味に整復します(下写真矢印が骨折ライン)。遠位骨片が外側に変位している場合は、外側からピンを刺入すると整復位を維持できません。 必ず内側からピンを刺入します。逆に内側に変位している場合は、外側からピンを刺入します。ここは重要なポイントです。


 左術中写真(同症例)のように骨折片同士を確実に密着させるように整復し、まず正中に1本仮止めのピンを逆行性に入れておくと整復位を維持しやすく、その後の内外側のピン刺入操作が容易になります(^_^)b 刺入したピン先端が対側の骨から不必要に突出しないようにしなければなりません。遠位側のピンの処理は成長期の動物の場合、刺入部の骨がたいへん柔らかいので、そのまま曲げずに皮膚を突き破らない程度に残して切断します。MIZUHO製のピンキャップを使っても便利です。最後に仮止めのために入れたピンを抜きます。
 術後は1ヶ月ほどで抜ピンします。外固定は必要ありません。ピンを曲げずに長めに残しているので、ピンが入っている間はわずかに跛行が残ることもあります。

 術後1ヶ月のレントゲン写真です。外側からのピンが微妙ですが、問題なく骨癒合しました。