2011年6月29日水曜日

虹彩囊胞(Uveal Cysts)


 12歳の黒ラブです。前眼房内に遊離した複数の黒っぽいマスが6時の位置に観察されます。眼脂や結膜に充血はなく、視力に異常はありません。本症は虹彩あるいは毛様体から発生し、中年から老年の犬によく見られます。 ゴールデン・レトリバー、グレート・デン、ボストン・テリアが好発犬種とされています。囊胞が角膜内皮に接触し角膜浮腫を起こしたり、瞳孔を塞いでしまい視覚に問題が起こったり、虹彩を前方に変位し線維柱帯網を閉塞してしまうほど囊胞の数が多く、将来的に緑内障を引き起こしそうな場合を除き、通常は無処置で除去・吸引するような手術を行うことはありません。

2011年6月16日木曜日

難治性角膜潰瘍


 犬の角膜潰瘍はほとんどのケースで外傷が関係しています。なりやすい素因として睫毛の異常やドライアイ、眼瞼が上手く閉じられない兎眼(眼の大きい短頭種にみられます)があります。角膜の上皮は再生が大変早く、普通は1週間以内に完全に修復されます。異所性睫毛など基礎となる外傷の原因が継続して起こっている場合や感染が残っている場合には治療して1週間経過しても治らない場合があります。また ボクサー潰瘍や再発性潰瘍、難治性潰瘍などと言われる基底膜の問題が存在している場合もあります。柴犬、プードル、コーギー、ゴールデン・レトリバーなどが好発犬種と言われています。キャバリアやチワワでも経験しています。
 写真はチワワでした。治療を開始して2週間経過しても最初の状態から比べると傷は縮小はしていましたが、点状に残っていました。血管新生もなく角膜の浮腫も見られず、治癒過程が終了してしまっているようでした。点眼によるこれ以上の改善は困難と判断し、全身麻酔下にて滅菌綿棒でデブリードを行いました。すると角膜上皮がベローンと剥がれていき、思った以上に大きな傷になりました(フローレスにて染色しています)。
 マイジェクターに少し細工をし、角膜格子状切開を行い、第3眼瞼フラップにて眼球を保護しました。1週間後の再検査時にフラップを除去し、完全に治癒しているのを確認しました。この手技は猫では禁忌となります。

2011年6月7日火曜日

獣医皮膚科認定医とニキビダニ3種類


 2010年7月に行われた日本獣医皮膚科学会にて、日本で初の獣医皮膚科認定医試験が実施され、9名が合格しました。そのうちの1人に当院の満田獣医師が認定医として合格しました。

 写真は犬毛包虫(ニキビダニ)症の原因となるDemodex corneiです。Demodex corneiは最近になって明らかにされたダニで、毛包および脂腺内に寄生するDemodex canisよりも小型で体長が短く、皮膚の表皮に寄生しています。



 Demodex injaiと呼ばれる体長の長いタイプも見つかっています(右写真上)。Demodex canisと同じく毛包や脂腺に寄生しています。 右写真下が一般的なDemodex canisです。明らかに体長が長いのが分かると思います。犬毛包虫に3種類もいること、ご存じでした?
 ニキビダニは主に垢や皮脂を摂食しており、宿主から離れると生存することは出来ません。