2013年1月28日月曜日

インターロッキング・ネイルによる骨折治療


 上腕骨を骨折したミニチュア・シュナウザーに対してインターロッキング・ネイル(直径4mm;79mm)を適用してみました。上腕骨の骨折には他に骨プレート法や創外固定法(髄内ピンと併用)も利用できます。
 インターロッキング・ネイルは大腿骨、脛骨、そして上腕骨の骨幹骨折を整復するために使用する動物医療では比較的新しい治療法です。骨幹部の骨折であれば、単純な骨折から重度粉砕骨折の整復にも使用することができます。
 選択するネイル(太いピンまたはロッド)の太さは、髄腔に挿入できる最大直径のものを選びます。当院には猫・小型犬用の4mmと4.7mmのネイルがあります。ネイルの近位が骨から突出しないように固定する骨よりもわずかに短いものを選択します。



雑誌SURGEONにでていた図。
 髄内ピン法の単独での使用は、Aの屈曲の力にはある程度抵抗できます(ピンがそこそこ太ければ)が、Bの回転する力、C不安定な粉砕骨折やD斜骨折に対する圧迫力により容易に骨折端の沈下や変位が生じてしまいます。これらの力を打ち消す目的として髄内ピンを単独で使用するようなことはせず、骨プレートや創外固定と併用して用いる必要があります。

 インターロッキング・ネイルのネイルには遠位と近位にそれぞれ1〜2カ所、スクリューで横留めするための穴(スクリュー孔)が開いていて、ネイルに対して垂直にスクリューで固定(ネイルとスクリューが連結)することにより(レントゲン左のように)、屈曲力の他、回転や軸性の圧迫・引っ張りに対しても強力に抵抗できるようになります。


        AO Principles of Fracture Management in the Dog and Catより
 骨の中心の骨髄腔内に設置するインターロッキング・ネイルは、中心軸から離れた位置、つまり骨表面で固定する骨プレート法や骨から離れた位置で固定する創外固定法よりも、外力に対してより強力に固定できるという力学的に有利な特性を持ちます。この特性が骨幹部の粉砕骨折の治療に威力を発揮します。

 術後は特にギプスなどの外固定をする必要はなく、骨折癒合後のインプラントの除去も必要ないと考えられています。