2011年2月16日水曜日

耳血腫


 柔道やレスリングの選手の耳が変形しているのを見たことがあると思います。餃子耳とかカリフラワーイヤーと言われています。耳血腫は耳の軟骨板内に血液が貯留した状態で、通常耳介の内側、耳の穴がある面にのみ貯留します。よく耳の軟骨と皮膚の間に発生すると言われていますが、正しくは軟骨板内です。原因は必ずしも明らかにされてはいませんが、ヒトでは柔道の寝技やボクシングでの耳への外傷から起こることが多いようです。犬猫では外耳炎による掻痒・疼痛・不快感から頭を振ったり、耳を掻いたりすることで発症することが多いように感じられますが、併発する耳の疾患が全く見られず、何が原因だったか全く分からない症例も多く経験します。
 ステロイドやインターフェロンを併用した注射器による吸引が試みられていますが、再発することが多く、また耳介の変形が避けられません。そのため多くの外科的手技が報告されていますが、いずれも最終的な目標は、ただ血がたまらないようにするだけでなく、再発しないように、且つ耳がいびつな形に変形するのを極力避け自然な外観を維持することが治療を行う上で考えなければならない重要なことです。処置後は2〜3週間程度の間、エリザベスカラーをつけて耳介の更なる外傷を防ぎ、上皮組織と軟骨組織が癒合するまで持続的に排液を促し、瘢痕を減らして変形を防ぐ目的で頭部に軽度な圧迫を加えながらバンデージで適切に固定する必要があります。しかし猫や柴犬のような立ち耳の犬種のバンデージを維持することは簡単ではありません(下写真は猫の症例)。


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