2011年2月15日火曜日

犬の義眼

 コッカー・スパニエルや柴犬などで遺伝的に発病頻度の高いとされる緑内障に対する究極の治療法です。犬の義眼は、ヒトで行われている眼の絵が描かれたアクリルプラスチックなどを萎縮した眼球の上に被せる、または欠損している場合には半球状のものを眼窩に入れるといった方法と全く異なり、眼の強膜(白眼の部分)を切開し中身(水晶体や硝子体、ぶどう膜など)を取り出し、黒いシリコンボールを眼球内に挿入する、いわゆる強膜内シリコンインプラント義眼という方法が行われています。緑内障の末期で視力の消失した牛眼といわれる、眼内圧が上昇することにより眼が大きくなった状態が適応となります。健常な対側眼に合わせたサイズのシリコンボールを眼内に挿入し、数ヶ月かけて徐々にシリコンボールのサイズにまで牛眼で大きくなった眼が小さくなっていきます。その他の選択肢の1つである眼球摘出と違い、外観上もほとんど違和感なく、一見義眼が入っているようには見えません。
 ヒトで眼圧が上昇すると眼の痛みや頭痛、吐き気が報告されています。牛眼を呈する犬では慢性的な高眼圧が続いているため、ヒトのような激しい全身症状が見られないことが多いようです。上写真の子は術前、元気も食欲もあり、眼痛を思わせる症状は見られませんでしたが、飼い主様曰く、「昔していた遊びをしばらくしていませんでしたが、手術後にまたやり出すようになりました。」と仰っていることから、緑内障による痛みが少なからずあったのではと思われます。
 遺伝性の原発性緑内障は、両眼を冒す病気です。視力を失った緑内障眼に高価な眼圧降下剤を継続して続けるより、手術をして早期に痛みから解放してやり、反対側の視力の残っている眼を緑内障へと進行させるのを遅らせるための予防に重点を置く、というのも緑内障治療の選択肢の1つになるのでは?

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