2011年2月25日金曜日

股関節脱臼(腹尾側脱臼)


 股関節脱臼のほとんどは頭背側に脱臼します。腹尾側脱臼はかなり珍しく教科書には1.5〜3.2%と報告されています。非観血的な整復方法も処置後の術後管理も、また手術の方法も頭背側脱臼とは違うテクニックが必要となります。腹尾側脱臼の非観血的整復を試みる場合、頭背側脱臼と同じ操作を行うと骨や軟部組織を損傷する可能性があります。
 股関節脱臼はほとんどのケースで手術せずに整復できると思います。もともと股関節に緩みがあったり(亜脱臼)、股関節形成不全やレッグペルテスなどに罹患していない正常な股関節の場合のみです。また脱臼してから時間が経過(4〜5日以上)した症例は、筋肉の拘縮や寛骨臼内に軟部組織(脂肪や関節包、血腫、結合織)が入り込むことにより整復困難となります。過去に報告されている成功率は47〜65%となっていますが、この報告は低すぎる気がします。非観血的に整復を試みた後、もしうまくいかなかった場合でも、その後に行う観血的整復の成功率に影響することはありません。


 通常2週間のテーピングによる固定と入院による運動制限(ケージレスト)が必要となります。腹尾側脱臼の場合は、後肢が開いてしまう外転を防ぐような固定をする必要があります。股関節の整復状態を2週間維持することができれば、その後の経過は非常にいいと思います。

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